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『恐れを知らぬ川上音二郎一座』

最初からあきらめモードに入っていたけど、生協チケットで奇跡的に取れた三谷作品『恐れを知らぬ川上音二郎一座』を観賞。仕事が一段落ついたところだったので、心おきなく笑ってこられました♪ 

ネタバレ

まず思ったのは、この人の脚本のおもしろさは「かけあい」にあるなあということ。演劇ならそれは当たり前といわれちゃうかもしれないけど、でも一人の人間が心情を吐露する独白とか、あえて語らぬことで何かを表現するとかいうこともあると思うのです。この舞台も導入部は堺正章が講談調で、音二郎の生い立ちからボストンに来たいきさつまでを語るけど、その部分は例外として、あとは誰かと誰かが会話をしている。そのかけあいによって状況もわかるし、笑いが生まれる(と思う)。

音二郎一座がボストンへ来て、一日だけの公演を打つ。その前日と当日を描いたもの。サンフランシスコ公演の売上を持ち逃げされたうえ、音二郎の自分勝手さに役者が逃げちゃったという苦境の中、なんと正面の劇場で名優が演じている『ヴェニスの商人』を、日本語で演じようとする。役者がいないもんだから、大道具や文芸部や下働きの子まで動員し「観客はどうせ日本語わからないから」と、困ったときはスチャラカポコポコでごまかせというハチャメチャぶり。しかしそれからも、パトロンだったはずの夫人が嘘をついてたり、役者志望の中米公使が舞台に出たがったり、どんどん収拾がつかなくなり、いったいどんな舞台になるのかはらはらどきどき。

いや、もう脇役がみんな達者だった。戸田恵子と堺雅人は役者の役ではないので、劇中劇では下手に演じなければならない。堺君はまったくの棒読み(笑)、戸田恵子は緊張のあまりずっと目をむいている。素人演技が絶妙です! 堺君が新撰組のだんだらの羽織を着ていたのはご愛嬌。

劇団の中心的役者で、みんなをあおってストしちゃう床音さんに今井朋彦。「小さいけれど~、へーや一面消臭……」のあの役者さんだ。よわっちいお殿様というイメージついちゃってたけど、シェークスピアもきまってました。稽古のシーンで柔軟体操して180度開脚を見せ付けてましたわ。ヴェニスの商人でアントーニオをやりたがった中米公使と、苦肉の策で二人アントーニオを演じることになるんだけど、これがすばらしい! 公使にアントーニオをさせていると思わせつつ、観客には自分がアントーニオと思わせる、という脚本家の高度な指示(お願い)をきっちりとこなす。

その中米公使、最初、誰かわかんなかったけど、パンフ見たら小林隆ではないか! 新撰組の源さんであったか。ほんわかムードの中にも威厳があって、これまで見た役とはまた違った魅力発見です。

津軽弁で笑わすカメちゃん、堀内敬子は青森出身ではないのですね。いや~、たしかに津軽弁のうまいへたは私にはわからないけど、うまかったんじゃないかなあ。一座の下働きなんだけど、実は音二郎が愛人としてそばにおいている(んだと思う)。みんなもそのことを知りつつ口をつぐんでいる。

一座の女形の蔵人さんに、浅野和之。体を壊して、どたんばで舞台に出られなくなる。ポーシャの役を貞にたくして、女形、役者の心得を説く。この役に一番、涙を誘われたなあ。さすがベテランの風格。

瀬戸カトリーヌは舞台初見だけど、こういうキャラもできるのね。ちょっとにぎやかすぎる感じはしたけど、下手な日本語がうまかった(あれ? へん?)。

そして、なんとか開幕した『ヴェニスの商人』は、観客がポーシャがシャイロックをとっちめるのにかこつけて、貞は音二郎のいいかげんさや、周囲の人への感謝が足りないことをなじり、カメちゃんを公使の助手の野口さんと逃がしてやる。このへんの会話とその理解のちぐはぐさとか、コミュニケーションギャップを逆手にとったおもしろさ。この劇中劇のあいだ、ハンカチ握りしめて笑いっぱなしでした。

そして主役二人はというと、運と度胸はいいけど、大言壮語ばかりで、やることがいいかげんな音二郎イメージに、ユースケサンタマリアはぴったり。常盤貴子はほんときれいでした。でもいかんせん、脇にこれだけの役者が揃うと、演技が見劣りするのは否めない。まあ、役と同じで、だらしない座長を周囲が盛りたて、華はあるけど女優としてまだ未熟な役者を先輩が励ますという構図が、現実にも当てはまったということかな。

全体として、堺正章が酷使されすぎという気がした。声がつぶれ気味で、老人役のときはいいけど、ヴェニスの二役は見ててちょっとつらかったっす。

そして、このこけら落とし公演が行なわれた、新しい劇場シアタークリエ。宝塚劇場のまん前なのね。一等地で土地が狭いという事情があるのか、ロビーが狭いとは聞いていたけど、ほんとに狭いな。ちょっとしたスナックが売ってるけど、椅子もないしテーブルも申しわけ程度。だから客席に飲食物を持ち込む人が多い。このときは平均年齢が高いこともあったせいか、かなりぎりぎりまでハンバーガーかじってる人もいた(こういう点では若い人のほうがマナーに絶対うるさいと思う)。高級感で売るのではなく、おせんにキャラメル~という、庶民派劇場ということであれば、これはこれでいいかなと思いました。演目もそんな感じだったしね。

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