『「雨の夏 30人のジュリエットが還ってきた』
シアター・コクーンにて「雨の夏 30人のジュリエットが還ってきた」を鑑賞。いや~、鳳蘭と三田和代を観ただけでも、行った価値がありました。
以下ネタばれ注意
ネタばれ
空襲で消滅した少女歌劇団の娘役スターだった吹雪景子(ふう子)は、終戦後、時間が止まったかのように、過去の中に生きている。歌劇団時代のファンクラブ、バラ戦士の会の生き残り4人が彼女の面倒を見つつ、劇団の再興を目指している。ふう子はコンビの男役、弥生俊が死んでしまったのではないかと疑いながらも待ち続ける。俊は死んではいなかったが、空襲で視力を奪われて……。
ふう子はロミオとジュリエットの稽古に現れない俊の代わりに、振付家の夏子に相手をさせるが、どうしても納得できない。「あなたはまるで私を100歳の老婆のように見る」。ふう子は夢の中に生きているけど、ふとした拍子に現実に戻っているのではないかと感じさせるところもある。俊は目が見えず、みんなが年老いた現実を見ないですむ。彼女の中ではふう子は若いまま。俊が盲目という設定はどうしても必要だったんだろうなあ。何十年振りかで再開したふう子と俊の言い合いは、完全に現実の時間と感じさせ、これでやっとふう子の時間も動き出すと思われた矢先に、ロミオとジュリエットを演じながら、俊が死に、そしてふう子も死んでしまう。このへんがどうにも割り切れず、もやもやもやとするんだけど、セリフに「死んでいるのに生きたふり、生きているのに死んだふり」というのがあって、彼女たちは死んだふりをしていたんじゃなくて、生きたふりをしてて、ようやくその生きたふりをやめることができたのかとも思う。
戦争の影はこのお芝居に常につきまとっている。ロミオとジュリエットを演じる場面では、バックに戦闘機や爆弾の音。去っていくロミオに置き去りにされるジュリエット。そのジュリエットたちがようやく還ってくるという意味なのか。どうなのか。芝居が終わってもあれこれと考え続ける。
このモデルとなった歌劇団は実在したらしいけど、イメージとしては完全に宝塚。ずっと大階段があるし。夢の中で生きる人たちの舞台にふさわしい。ふうこの三田和代は恐ろしいほどのセリフの量だ。鳳蘭は意外に出番は少なく、第二幕に集中してるんだけど、短い時間で存在感を見せつける。背筋がすっと伸びて燕尾がとってもお似合い。え、もう60過ぎてるのか……。びっくりだ。その妹、いや娘が真琴つばさ。宝塚男役はやはり夢の世界の住人だわ。歌姫が毬谷友子さん。マイクいらないんじゃないかと思ったくらい。
ふう子が過去に生き、それをいい年したオヤジが支えるという構図のグロテスクさを指摘する若い兄弟に横田栄司とウェンツ瑛士。ここも兄弟って違和感ないですね。ウェンツ君、二幕目はずっと水玉のワンピース。出てきたときが衝撃だった(笑)。顔は可愛いけど、体はやっぱり女性に比べてごつい。鳳蘭と並ぶとそれがよくわかった。男役でもやっぱり女性は細いんだ。振付師の夏子の中川安奈さんも、宝塚の男役かと思ったくらいすごくスタイルがいい。
バラ戦士の会の男性陣は徹底的に女性のサポートという感じだけど、静かな演技が逆に印象的。おばさん30人(推定)が、きゃあきゃあ言ってるのは(声がすごく通るし)、苦手な人にはコタえるであろう。それを中和していました。古谷一行はやっぱりカッコいいですね。
でもこれはやはり主役は女性たち。鳳蘭は男役スターという役どころだけど、私生活では娘に頼り、バラ戦士の会会員だった北村さん(ウェンツ達のお父さん)に、自分を助けてほしいと電話をかけるなど、女性的な弱さも見せる。一瞬、理恵のお父さんは、その北村さんではないかと思うのだが、あっさり否定。「理恵の父親は……忘れてしまった」って、けっこうすごいセリフだと思うよ。男不要の女の強さというか、いや戦争では常に男に置いてきぼりにされて、もう期待はできないということなのか。うーん。
鳳蘭は実際にも娘が二人いるよね。もうだいぶ前になるけど、結婚して子ども生んで、あっという間に離婚したという記憶がある。子どもが欲しくて、その欲しいものを手に入れたら、男はもういらないわ、という感じだったなあ。(あ、これはあくまで私から見たイメージですので。)体も全然崩れてないし、あのオーラはすごいっす。三田さんは女優、鳳蘭はスターと呼びたい。COCOも観たくなってきた。
女性たちがユニゾンでセリフを連ねるギリシャ劇のコロス(風)とか、『オレステス』とちょっと似た演出があって、最後に異色の歌で終わるのも一緒。オレステスのあの歌は、えーーっっ(不満の声)だったけど、今回は……。このタイミングで清志郎は反則でしょう。でも歌詞はこの劇にぴったり。
ずっと夢を見て安心してた
ずっと夢を見て幸せだったな
ずっと夢を見て、いまも見てる
夢の中で生き、死んだあと、彼女たちはどこへいくのか。


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