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2009年5月16日 (土)

『相思双愛』

紀伊國屋ホールにてバンダラコンチャ『相思双愛』を鑑賞。
ちょっと変わった4人芝居。重松清の「四十回のまばたき」と横光利一の「春は馬車に乗って」を、交互に重ねて一本の物語として演じる。でもあくまで時代設定も登場人物も違う二本のお話。共通点は登場人物が一つ屋根の下にいる男女で、女が病気、男が看病するという点。途中で一人別の男が入ってくる。どちらも男が献身的なのだが、それを近藤芳正、途中で入ってくる男が榎木孝明、現代版の「四十回の…」の女は辺見えみりで「春は…」が坂井真紀。

男性二人は性格のまったく違った二人の男を演じて秀逸。近藤さん、すごいっす。

以下ネタばれ注意

 

「四十回のまばたき」のほうは、珍しく男が翻訳家という設定。圭司は最新訳書がヒットして仕事が忙しくなっている。その本の原作者が日本に来て、対談の予定が入っているという日に、交通事故で死んだ妻の妹、耀子が転がり込んでくる。彼女は季節性感情障害という病気があり、冬になると動けなくなり、冬眠状態に陥る。去年までは夫婦で面倒みていたが、今年は一人でみなくてはならない。いくら義兄妹とはいえ、男女が一つ屋根の下はまずいだろうという圭司に、耀子はけいちゃんでないとだめだと言ってきかない。おまけに彼女のお腹には赤ん坊がいるという……。そこへもう一人、得体のしれない男がやってくる。原作者の代理人というのだが、実はこれが原作者で、完全な日本人だった。やはり妻を亡くしていて、死後に出てきた日記を読んでも読んでもよくわからないので、アメリカに行って英訳したものだという。

そして「春は馬車に乗って」は、妻が肺病を病んでいる。作家の男は隣の部屋で仕事をしながらも、わがまま放題の妻につきあっている。二人ともぽんぽんと言いたいことを言いながら、夫は妻を見捨てない。時代は昭和の初期くらい? 水道代70銭という言葉があった。坂井さんは『夜の訪問者』でもそうだったけど、昭和初期の感じが似合うなあ~。どこかのお嬢様だったのかという感じで、肺病なのにそんな元気かという勢いで、夫に悪態をつきつつわがままを通す。最初はうるさい感じで、夫はなぜここまで献身的なのかという疑問すら湧くのだが、彼女の兄が家を訪ねてくるところでイメージが一変。どうやら彼らは駆け落ちをしたらしく、まだ戸籍上は夫でも妻でもないという。「妻でもない女に君が尽くしているのは、変だ」と彼女の兄が言う。ここは原作とは設定が違うみたい。でもこの設定がなければ、わりと平凡な話になってしまうところ、二人が夫婦じゃなかったということで、それまでの激しい言い争いに、すさまじい愛情が浮き出してくる。

春を迎え、耀子は赤ん坊を生んでいる。そして肺病の妻は死に向かっている。どちらも正式な夫婦ではない、あまり一般的でない男女の関係だけど、こういう愛情もまたあり。若いうちはあまり心に響かないかもしれないけど、私は好きだな、こういうの。そしてやっぱり近藤さんの演技力ががっちり支えてましたねえ。榎本さんはどちらでもバイスタンダーというか、本筋にはあまり関係ない役なんだけど、その存在が話を引きしてめている。前に「ハゲレット」をDVDで見ておもしろかったので、近藤さんの名に惹かれて取ったという面もあるチケット。作品自体もおもしろかった。

そういえば現代版「四十回のまばたき」=forty winks とは、うたたねのことだそうで。知らなかったなあ。さらにいえば、季節性感情障害(SAD)というのも本当にある病気。冬季うつとも言うらしい。日に当たるといいそうです。

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